院長の森下です。第二回目は猫、特に雄猫で起こりやすい尿道閉塞について書いてみようと思います。
尿道閉塞はその名のとおり何らかの理由で尿道が狭くなっておしっこの出がわるくなる病気です。症状として初期には、排尿姿勢をとるのに尿がポタポタとしか出ない、あるいは全くでない、腹痛といったことが起こります。尿がでないということは、体から排出させたい老廃物が出せないということになり、それらが蓄積していくと食欲低下、元気低下、嘔吐、意識低下、そのままの状況が続けば生命の危機に陥ります。左の写真は尿道閉塞を起こした猫のレントゲン写真です。写真の真ん中あたりに丸い輪郭の構造物がみえると思いますが、これが過剰に膨張した膀胱です。通常なんの異常もなくここまで尿を膀胱に溜め込むことはないです。尿が出にくくなっている理由としては、尿道結石、死んでしまった細胞やタンパク質でできた塊(栓子)による尿道の閉塞、尿道の病的変化による狭窄・閉塞、またはそれらの複合などが挙げられます。上記したように雄猫に多く、それは尿道の出口が雌猫と比べ非常に狭いということが関係してます。2〜4歳以降の雄猫でみることが多いように思います。治療は尿道の閉塞物は除去すること、除去した原因を確認し、その原因の治療・予防を行うこと、閉塞により起こった病態を改善することです。尿道閉塞の解除ができない場合は手術することもあります。
当院で実際にあった例を紹介します。上記のレントゲン写真は、尿道閉塞の雑種猫8歳雄の子です。尿が出ない、食欲低下との訴えで来院されました。腹部触診で硬く大きな膀胱と思われる構造物を触知し、レントゲン写真の所見、症状から尿道閉塞を疑いました。尿道閉塞を解除し、得られた尿を検査した結果、尿中に多数存在していたストルバイトと呼ばれる結晶(結石の基になるもの)が閉塞に関連していると評価しました。また、血液検査の結果、高窒素血症(血液中に老廃物が過剰に溜まった状態)になっておりましたので、点滴も行いました。ストルバイトは食事の変更で予防することが比較的しやすい原因ですので、食事指導を行っております。その後食事指導どおりに食事を変更されて調子は安定しました。
今回は尿道閉塞について書いてみました。放置すると亡くなってしまうこともある怖い病気です。上記のような症状がみられたら早めのご来院を勧めます。では、また!